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走った後だけでなく、職場の階段でも膝の外側がうずく方へ
利用者さんの居室へ向かう階段で、膝の外側にズキッとした痛みが走る。ハーフマラソンに向けて朝の距離を延ばし、坂道も取り入れ始めた頃からだとしたら、練習の負担が関わっているかもしれません。腸脛靱帯炎(ランナー膝)でみられやすい症状、別のけがと見分ける手がかり、仕事や家事を続けながら走る量を調整する考え方を整理しました。練習再開の目安と、整形外科へ相談するタイミングも紹介します。判断の基準は大会の日程ではなく、膝の反応です。
この記事の要点まとめ
- 膝の外側の痛みはランナー膝のことがありますが、痛む場所だけでは判断できず、腫れや膝崩れなども確認します。
- 階段や歩行で痛む間は走行量を減らし、仕事や家事で膝に響く動作も調整します。
- 再開は日常動作で痛みがないことを目安に、平地の短距離から段階的に進め、症状が続く場合は整形外科へ相談します。
ランニング後の膝の外側の痛みは、ランナー膝と考えてよい?

走る距離や坂道を増やした後に出る膝の外側の痛みは、腸脛靱帯炎(ランナー膝)でよくみられる症状です。ただし、痛む場所だけで診断を決めることはできません。腸脛靱帯炎はランニングに関連するけがの一つとして知られています。同じ膝の外側でも別のけがが隠れていることがあります。
腸脛靱帯炎では、どこが・いつ痛みやすい?
腸脛靱帯は、太ももの外側を骨盤から膝の下まで走る帯状の組織です。膝の曲げ伸ばしをくり返すうちに、膝の外側の骨の出っ張り付近に負担がかかる場合もありますが、痛みの原因は医師が判断します。
走り始めは平気なのに、数キロ進んだあたりで外側が痛み出す。走り終えた後や、階段、とくに下りで響く。こうした出方が典型的です。
とはいえ、自分で確かめられるのは「傾向」まで。押して痛い場所があるからといってランナー膝と決めつけず、症状の経過と合わせて見ていきます。
距離を増やしたことや坂道練習は、痛みとどう関係する?
走行距離や回数を短期間で増やすと、組織の回復が追いつかないまま負担が積み重なります。下り坂は膝を軽く曲げたまま着地の衝撃を受け止める時間が長く、外側に負担がかかりやすい場面です。いつも道路の同じ側を走る、シューズがすり減っている、O脚傾向があるといった点も振り返ってみてください。
着地を柔らかくするよう走り方を見直したところ、膝のけがのリスクが下がったという報告もあります(エビデンスの強さは低いとされています)1。
見落としやすいのが、走っていない時間の負担です。介護の現場での長い立ち歩きや階段の往復も、同じ膝に重なっていると捉えましょう。
腫れや膝の力が抜ける感じがあるときも、ランナー膝?
膝の力が一瞬ガクッと抜ける、何かが引っかかって曲げ伸ばししにくい。こうした症状は腸脛靱帯炎だけでは説明しにくく、半月板損傷や外側側副靱帯損傷などを調べる手がかりになります。膝崩れは「体重をかけた瞬間に膝が折れそうになる感じ」と表現されることが多い症状です。
転んだ後に膝の内出血がある、はっきり腫れているといった場合も、靱帯や骨のけがを含めて診察で確認します。
年齢的に変形性膝関節症を心配される方もいますが、研究では趣味で走る人の股関節・膝の変形性関節症の割合は、対照群より低く報告されています2。関節リウマチや膝蓋腱炎など、痛む位置や経過が異なる病気もあるため、決めつけずに確かめることが先決です。
階段でも膝が痛い間は、走るのを休むべき?

階段のような日常の動作にも痛みが出ている間は、痛みを押して走り続けず、まずランニングの量を減らすか、いったん休むことを考えます。ただ、まったく動かないことと、痛みを増やす運動を控えることは別物です。生活に必要な動きは保ちながら、膝の外側に響く負担を減らしていきます13。
痛みが出た直後は、走行中止と冷却をどう進める?
次のような状態になったら、その日の走行は切り上げる目安です。
- 走るほど痛みが強くなる
- 痛みをかばって走り方が変わってきた
- 歩く、階段を下りるといった動作でも響く
冷やす場合は、保冷剤や氷をタオルで包み、布越しに短い時間だけ当てます。肌に直接、長く当て続けるのは避けてください。冷却は痛みを一時的にやわらげる手段で、原因そのものを解消するものではない点も覚えておきましょう。
介護の仕事や家事を続ける日は、何を減らせる?
仕事を一律に休まなければならないとは限りません。痛みが増える場面を1〜2日メモしてみると、減らせる動作が見えてきます。
| 痛みが出やすい場面 | 調整の例 |
|---|---|
| 階段の往復 | エレベーターを使える場面では使う、用事をまとめて往復を減らす |
| 重い物の運搬 | 台車を使う、同僚と分担する |
| 長時間の立ち歩き | 記録作業などを座って行う時間を挟む |
| 家事 | 買い物を数回に分ける、洗濯物は座って畳む |
移乗介助のように勤務中どうしても避けられない動作もあるはずです。そうした動作は、受診の際に仕事内容として具体的に伝えると、負担の減らし方を一緒に考えやすくなります。
ストレッチや筋力づくりは、痛む時期にも始めてよい?
痛みを我慢して強く伸ばしたり、鍛えたりするのは勧めません。腸脛靱帯炎の保存療法(手術をしない治療)では、ストレッチや股関節外転筋(脚を外へ開く筋肉)を中心とした筋力トレーニングなどが検討されていますが、標準となる組み合わせはまだ定まっていません3。
回数や頻度は症状によって変わるため、運動した後や翌日に痛みが増えていないかを見ながら調整します。テーピングやサポーター、インソール、マッサージは支えになる場面もありますが、あくまで補助です。
ポイント
完全に動かないのではなく、膝の外側に響く走行や動作を減らすことが出発点です。
膝の痛みが落ち着いたら、ランニングはいつ再開できる?
「何日休めば走れる」という決まった日数はありません。日常生活での症状と、試しに走った後・翌日の膝の反応を見て判断します。大会の日程から逆算して練習量を戻さないことが、遠回りを避ける判断軸になります。
階段や歩行で痛むうちは、再開を待ったほうがよい?
待つことをおすすめします。普段の歩行や職場の階段で痛みが出ず、膝を無理なく曲げ伸ばしできることが、再開を考える出発点です3。
片脚で立つ、ゆっくりしゃがむといった動作で外側に痛みが出ないかも確かめておきましょう。ぐらつく感じや引っかかりが残っているなら、走って確かめる前に整形外科で相談してください。
再開後は、距離・坂道・走る回数をどう戻す?
最初は平坦な道で、短い距離をゆっくり走ります。走っている間だけでなく、その日の夜と翌朝の膝の状態まで確認するのがコツです。
- 走行中・走行後・翌日に痛みが出ないかを確かめる
- ぶり返さなければ、距離か回数のどちらか一方だけを少し増やす
- 坂道、とくに下り坂やスピード練習は最後に戻す
距離と速さと坂道を同時に増やすと、どれが負担になったのか分からなくなります。道路の傾きやシューズのすり減りも、この機会に見直してみてください。着地を柔らかくする意識も、膝への負担を考えるうえでの選択肢です1。
大会が近くても、痛みが戻ったら練習を続けてよい?
次のような変化があれば、練習量は戻さず、走るのをいったん控えましょう。走るたびに痛み出すまでの距離が短くなる。翌日まで痛みが残る。仕事中の階段で再び痛む。
初めてのハーフマラソンとなれば、出たい気持ちが強いのは自然なことです。それでも、参加するかどうかは急いで決めず、仕事や家事への影響も含めて医師と相談しながら考えていくほうが、次の大会も見据えた選び方につながります。
膝の外側の痛みは、どんなとき整形外科へ相談する?
腫れや動かしにくさ、膝の力が抜ける感じがある場合や、痛みが仕事に影響している場合は、自己判断で練習を続けず整形外科へ相談してください。診察では、骨だけでなく筋肉・腱・靱帯なども症状に応じて確認していきます。
腫れ・動かしにくさ・内出血がある場合、受診を急ぐ?
強い腫れや熱っぽさがある、膝を十分に曲げ伸ばしできない、体重をかけにくい、転倒後に内出血がある。こうした場合は早めの相談をおすすめします。
痛みが軽くても、走るのを控えているのに階段の痛みが続く、仕事や家事に支障が出ている場合は受診を検討するタイミングです。
診察では何を確認し、治療やリハビリをどう考える?
痛み始めた時期、練習量の変化、階段や仕事中の症状、転倒の有無などを伺い、膝を動かしたり押したりして状態を確かめます。そのうえで画像検査が必要かを判断します。
レントゲンは骨を見るのに向いていますが、腱や靱帯、骨の内部の変化まで写るとは限りません。レントゲンや超音波診断装置、開口部が広く閉塞感の少ないオープン型MRIなどは、医療機関の設備や症状に応じて使い分けます。治療は走行量や生活動作の調整、運動療法などを症状に合わせて検討し3、医師の診断に基づいて理学療法士がリハビリを担当する場合もあります。検査や治療の費用は内容によって変わり、医療機関によっても異なるため、受診先でご確認ください。
相談するとき、仕事と練習の状況をどう伝える?
仕事と練習を続けながら受診するなら、限られた診察時間を生かせるよう、事前にメモを用意しておくと話がスムーズです。走行距離を増やした時期、坂道を取り入れた時期、勤務中に痛む場面、大会の予定。この4つがあれば、症状と生活の両方から方針を考えやすくなります。
スポーツによる膝の痛みは、練習だけでなく仕事や日常生活にも影響することがあります。当院に限らず、医療機関に相談する際は症状と生活状況の両方を伝え、治療とリハビリの方針を相談してください。
ポイント
次の練習の前に、階段を下りたときの膝の外側の痛みを確かめてみてください。痛みが残っているなら、走る前に相談するのがひとつの目安です。
よくある質問
Q. 痛み止めを飲めば、大会に出ても問題ありませんか?
A. 痛み止めで痛みを感じにくくなっても、膝にかかる負担そのものは変わりません。痛みを目安に走る量を調整しにくくなるため、大会前に服用を考えている場合は、出場の判断も含めて医師にご相談ください。
Q. 走るのを控えている間、体力を保つ方法はありますか?
A. 膝の外側に痛みが出ない範囲であれば、ほかの運動で体を動かせる場合があります。ただし、自転車のように膝の曲げ伸ばしをくり返す運動では痛みが出る方もいるため、どの運動が合うかは症状を見ながら医師や理学療法士と相談して決めていきます。
Q. ランニング中に足首や足の外側が痛むのも、同じ原因ですか?
A. 膝の外側の痛みとは別の部位のけがや、疲労の蓄積による骨のトラブルなどが関わっていることもあります。痛む場所が膝から離れている場合は、腸脛靱帯炎とひとまとめにせず、別に診察を受けることをおすすめします。
Q. 仕事中もサポーターをつけておいたほうがよいですか?
A. 心理的な支えになる方もいますが、サポーターだけで負担が減るわけではありません。締め付けで血流が悪くなることもあるため、着用するかどうかや時間の目安は、膝の状態と仕事内容を伝えたうえで医師にご相談ください。
参考文献
1. Alexander JLN, Culvenor AG, Johnston RRT, et al. Strategies to prevent and manage running-related knee injuries: a systematic review of randomised controlled trials. British Journal of Sports Medicine. 2022. PMID: 36150753 / DOI: 10.1136/bjsports-2022-105553
2. Alentorn-Geli E, Samuelsson K, Musahl V, et al. The Association of Recreational and Competitive Running With Hip and Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-analysis. The Journal of Orthopaedic and Sports Physical Therapy. 2017. PMID: 28504066 / DOI: 10.2519/jospt.2017.7137
3. Sanchez-Alvarado A, Bokil C, Cassel M, et al. Effects of conservative treatment strategies for iliotibial band syndrome on pain and function in runners: a systematic review. Frontiers in Sports and Active Living. 2024. PMID: 39247485 / DOI: 10.3389/fspor.2024.1386456
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