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痛みが引いても崩れる足首と再発を防ぐ視点
足首の捻挫を繰り返す原因には、過去のケガで残った靱帯の緩みと、関節を支える筋力やバランス機能の低下が関係しています。このうち筋力やバランス機能が落ちていると、足首がぐらついたときに踏ん張りがききにくくなります。痛みが落ち着いて普通に歩けるようになっても、階段の下りや運動中の方向転換で足首がガクッとなる場合は、足首の安定性が戻りきっていないサインかもしれません。
この記事では、ひねりやすさが続く仕組みや整形外科で行う検査、仕事やスポーツを続けながら取り組むリハビリテーションと日常の工夫について解説します。ご自身の足首の状態を整理し、再発予防へ踏み出すための判断材料としてお役立てください。
この記事の要点まとめ
- 捻挫をくり返すうらには、靱帯のゆるみや、筋力・バランスの働きが落ちていることが関わる場合があります。
- 足首が崩れる場面や戻りたい活動を医師に伝え、診察や画像検査で状態を調べます。
- リハビリや筋力・バランス練習を段階的に進め、サポーターは補助として活用します。
足首の捻挫を繰り返す原因と、痛みだけでは判断できない不安定感

腫れが引いた後も残りやすい靱帯の緩みと、支える力の低下
足首の捻挫を繰り返す背景には、関節をつなぐ靱帯の緩み(構造の問題)と、足首を支える筋力やバランス機能の低下(機能の問題)の2つが関わっています。足関節捻挫の多くは足首を内側にひねる形で起こり、外くるぶしの周囲にある靱帯が引き伸ばされたり傷ついたりします。腫れや痛みが引いた段階で固定やケアを終えてしまうと、靱帯が伸びたままになり、関節の遊びが大きくなることがあります。
また、けがのあとに足首を動かさない期間が続くと、足首を支える筋肉の力が落ちることがあります。さらに、足首の傾きを感じ取ってとっさに体勢を立て直す感覚(運動制御やバランス機能)が鈍くなると、少しの段差でも踏ん張れずに再びひねりやすくなります。足首を内側やつま先側へ動かす筋力、足首の傾きを感じ取る感覚、すねの外側の筋肉が反応する速さは、外側の靱帯を痛めるけがの起こりやすさに関わると報告されています1。
| 繰り返す要因の分類 | 主な状態 | 日常や運動で現れやすい変化 |
|---|---|---|
| 構造的な要因 | 靱帯損傷・靱帯の緩み、組織の癒着 | 関節の遊びが大きくなり、物理的にぐらつきやすい |
| 機能的な要因 | 筋力低下、バランス機能・運動制御の低下 | 傾いた瞬間に筋肉が反応できず、足首が崩れやすい |
この2つの要因は重なり合っていることが多く、靱帯が緩んでいるのか筋力が足りないのかをご自身で区別するのは簡単ではありません。ひねりやすさが続く状態を慢性足関節不安定症と呼ぶこともあり、構造と機能の両面から状態を見極めることが求められます。
「普段歩けるから治った」はよくある誤解:足がガクッとなる場面を振り返る
平地を問題なく歩けるようになるとケガが治ったと考えがちですが、負荷のかかる動作で足首がガクッとなる場合は、微小な不安定性が残っている可能性があります。平坦な道を一定のペースで歩く動きに比べ、重い資材を持って階段を下りる動作や、サッカーなどで素早く方向転換・着地をする動作では、足首の関節に大きな負担がかかります。
そのため、普段の歩行では気づかなくても、仕事中の段差や週末に子どもとボールを蹴る場面でだけ「足首が抜けそうになる」「外側へ崩れる感覚がある」というケースは少なくありません。また、固定期間の影響で関節の柔軟性低下や可動域低下が残っていると、足首がうまく曲がらずに別の場所へ無理な力がかかることもあります。
受診するかどうか迷っているときは、まず日常で足首に違和感が出る場面を整理してみることが判断の助けになります。
- どのような動作で崩れるか(階段の下り、荷物の運搬、方向転換など)
- どのくらいの頻度でひねりそうになるか
- 動いたあとや翌日に、痛みや腫れがぶり返すか
これらをスマートフォンなどにメモしておくと、ご自身の足首がどの程度の負荷に耐えられなくなっているのかを把握しやすくなり、診察を受ける際にも具体的な状況を医師へスムーズに伝えられます。
軟骨損傷など別の損傷を疑う症状と、受診を急ぎたい状況
ただの捻挫のくり返しだと思っていても、足首の奥の痛みや引っかかる感じが続くときは、骨や軟骨など、ほかの場所にけがが隠れていることがあります。たとえば、強くひねったときに靱帯が骨の一部を引っぱってはがす剥離骨折があります。また、足首の土台にある距骨(きょこつ)という骨の軟骨に、ひびが入ったり、はがれたりする距骨骨軟骨損傷もその一つです2。
また、一度の大きなケガだけでなく、靱帯の緩みを抱えたまま関節がぶつかり合う動きを繰り返すことで、軟骨に少しずつ負担が蓄積するケースもあります。次のような症状がみられるときは、自己判断で様子を見続けず、早めに整形外科で状態を確認することが大切です。
ポイント
ひねった直後に体重をかけられない、腫れや内出血が強く出ている、くるぶしの骨を押すと強く痛む場合は、速やかな受診が推奨されます。また、普段から足首の奥が痛む、動かすと引っかかる感じがする、運動のたびに腫れを繰り返すといった場合も、早めに医師へご相談ください。
捻挫を繰り返す足首を整形外科で相談するとき、伝えたいことと確認すること
足首が崩れる感覚と、戻りたい活動を診察で伝える
整形外科で相談する際は、現在の痛みの強さだけでなく「どんな場面で足首が崩れるか」と「これから戻りたい活動」を医師に伝えることが出発点になります。スポーツによるケガや日常の捻挫では、歩けるようになっていたり痛みが軽かったりすると受診をためらう方も多いですが、痛みの有無だけでは関節の安定性や組織の傷み具合を判断しきれないためです。
一般的なスポーツ整形外科の診療では、部活動中のケガから社会人のスポーツ、日常の労働に伴う運動器のトラブルまで幅広く対応し、競技や元の生活への復帰を見据えた確認が行われます。初診の問診では、最初に捻挫したときの状況やこれまでの経過に加え、現在困っている具体的な動作を共有することが大切です。
たとえば「職場の階段で資材を持って下りるときに右足首が不安になる」「週末に子どものサッカー練習を手伝う際、切り返しで足をひねりそうになる」といった生活の場面をそのまま言葉にしてみてください。目標とする仕事や運動のレベルが共有されることで、一時的に痛みを抑えるだけでなく、どの程度まで動いてよいか、いつどのように練習へ戻るかという先々の見通しを立てやすくなります。
繰り返す捻挫で確認したいことと、画像検査の役割
診察では、医師が足首の腫れや押したときの痛みの場所、関節を手で動かしたときのぐらつき、曲げ伸ばしのできる範囲(可動域)などを確認し、そのうえで必要な画像検査が検討されます。骨の異常を調べるレントゲン検査だけでなく、状態に応じて超音波(エコー)検査やMRI検査を組み合わせることで、靱帯や軟骨などの軟部組織まで目を向けた評価が行われます。
それぞれの画像検査には異なる役割があり、すべての人に同じ検査を一律に行うのではなく、診察の所見や症状の経過に合わせて医師が判断します。
| 検査の種類 | 主に確認する対象 | 繰り返す捻挫における役割 |
|---|---|---|
| レントゲン(X線)検査 | 骨の折れ、欠け、関節の隙間 | 剥離骨折の有無や骨の並びを確認する |
| 超音波(エコー)検査 | 靱帯、腱、筋肉などの軟部組織 | リアルタイムで組織の状態や関節の動きを観察する |
| MRI検査 | 靱帯、軟骨、骨の内部、筋肉 | レントゲンに写りにくい靱帯損傷や距骨軟骨損傷などを詳しく調べる |
閉所が苦手な方に配慮した開口部の広いオープン型MRIなどを備える医療機関もあり、骨だけでなく筋肉・腱・靱帯の状態まで把握して治療方針に活かす体制がとられています。なお、保険診療(3割負担)で画像検査を受ける場合の一般的な費用相場は、レントゲン検査で1,000〜2,000円程度、MRI検査で6,000〜10,000円程度が目安となります(初診料や診察料は別途かかります。記載した金額は一般的な相場であり当院の費用ではありません。実際の費用は検査内容や医療機関により異なります)。ご自身の足首でどの検査が必要になるかは、診察時に医師へご確認ください。
仕事や運動で困る動作を共有し、リハビリを相談する
検査によって足首の状態が把握できたら、関節の動きや支える力を取り戻すための保存療法や運動器リハビリテーションを相談していきます。再発を防ぐためのリハビリテーションでは、医師の診断のもとで理学療法士などの専門スタッフが一人ひとりの症状や生活状況に合わせた計画を立て、段階的に運動を進めていきます。
慢性的な足首の不安定感がある方に対しては、バランス練習を取り入れることで足首の機能や安定感の向上が図れることが複数の研究で報告されています3。また、医療機関によっては理学療法士による個別リハビリのほか、柔道整復師が在籍して手技療法や関節の固定、日常の運動指導などに対応し、低周波や圧力波などの物理療法機器を組み合わせて痛みやこわばりを和らげる方法をとることもあります。
リハビリテーションの計画を立てる際も、仕事の作業内容や運動の予定をスタッフと共有しておくことが欠かせません。休日に子どもとサッカーのパス交換をしたい、平日の立ち仕事や運搬作業で足を取られないようにしたいといった具体的な目標があることで、足首の柔軟性を戻す時期から筋力・バランスの練習へ移るタイミングまで、無理のない範囲で一緒に取り組みやすくなります。
再発を防ぎながら仕事とサッカーを続けるための練習・サポーター・通院の考え方

自宅でできる筋力・バランス練習と、サポーターやテーピングの役割
通院と並行して家庭で行える基本的なケアには、足首の周囲の筋肉を動かす練習や片脚立ちなどのバランス練習3があり、痛みや腫れが出ない範囲で段階的に行うことが前提となります。たとえば、椅子に座った状態でゴムチューブを使って足首を外側へ返す動き(腓骨筋の練習)や、壁や机に軽く手をついて行う片脚立ち、ゆっくりとしたつま先立ちなどがよく取り入れられます。ただし、関節の炎症が残っている時期に無理な負荷をかけると症状が長引くことがあるため、始める時期や回数は医師や理学療法士の指導を受けて調整してください。
また、仕事中や運動時にサポーターやテーピングを使う方も多いですが、これらはあくまで関節の動きを補助し保護するためのものです。慢性的な足首の不安定感があるスポーツ選手では、キネシオテーピング(伸縮性テープ)で足首がある程度安定しやすくなると報告されています4。ただし、テープだけで足首の機能や運動時の動きやすさが十分に補えるとは限りません。
ポイント
サポーターやテーピングを着けていれば練習や重労働を続けてよいというわけではありません。作業用の靴はかかとが安定したものを履いて靴ひもをしっかり締め、荷物を持って階段を下りるときは手すりを使うなど、日常の足元の工夫も合わせて取り入れましょう。
装具やサポーターには固定力の強いものから動きやすさを重視したものまで種類があるため、作業内容や運動の段階に合った選び方と着ける期間についても、診察時に相談することをおすすめします。
痛みが消えたかだけで決めない、サッカーの手伝いを再開する目安
週末のサッカー練習の手伝いなど、動きの激しいスポーツを再開する際は、普段の痛みが消えたかだけでなく、片脚で安定して立てるか、方向転換で足首が崩れないかといった動作の確認を含めて判断します。子どもの前では普段通りに動こうとして、無理を重ねてしまう親御さんも多いです。しかし、足首の関節が十分に曲がらない状態や、とっさに踏ん張る筋力が戻っていない状態でボールを蹴ると、同じ場所を再びひねるきっかけになりかねません。
一般的には、次のような段階を踏んで少しずつ運動の負荷を上げていきます。
1. 平地での歩行や階段の上り下りで痛み・不安定感がない
2. 片脚立ちや軽いジャンプ、つま先立ちが安定して行える
3. 直線での軽いジョギングから始め、徐々にスピードを上げる
4. 緩やかなステップや方向転換、パス交換などの基本動作を行う
5. 対人プレーや実戦に近い動きへ戻る
動いたあとや翌朝に足首の腫れや重だるさが出る場合は、まだその段階の負荷が足首にとって大きすぎるサインです。具体的な再開の時期や練習量の調整は、損傷の程度や年齢、日頃の運動量によって一人ひとり異なるため、医師やリハビリスタッフと動作を確認しながら進めていきましょう。
仕事を続けながら受診するための予約と事前問診
平日に仕事をしていると、受付後の待ち時間や通院の手間が気になって受診を先延ばしにしてしまうことがあります。そうした負担を減らすため、近年はスマートフォンから利用できるLINE予約やWEB予約、来院前に症状を入力できる事前WEB問診を設けている整形外科が増えています。
初診や再診の予約システムを活用すれば、仕事の休憩時間や帰宅後の夜間でも予定に合わせて受診の申し込みが可能です。また、事前のWEB問診がある場合は、半年前に捻挫してからの経過や、職場の階段で足首がガクッとなった場面、週末の運動で困っていることなどを落ち着いて記入しておくことができます。受付で一から説明する手間が省けるだけでなく、診察室でも聞き漏らしを防ぎながら相談に入りやすくなります。
駐車場と土曜診療を踏まえて通院を検討する
リハビリテーションや経過の確認には、一定の期間の通院が必要になることがあります。自宅や職場からの動線、駐車場の有無、土曜日の診療対応などを事前に確認しておくと、仕事を続けながら通院の計画を立てやすくなります。たとえば姫路市やたつの市、太子町周辺のようにマイカーでの移動や通勤が中心となる地域では、停めやすい専用駐車場が備わっているかどうかが続けやすさに直結します。
また、昼間に仕事を抜けにくい方は、夕方以降や土曜日の午前にも診てもらえる医療機関を選ぶのも一つの方法です。ただし、土曜日にどの検査やリハビリテーションを受けられるか、予約がいるかどうかは、医療機関ごとにちがいます。
足首のふらつきを「歩けるから大丈夫」とひとりで抱えこまないでください。まずは診療時間や受付のしかたを各医療機関の案内で調べ、階段や運動で崩れる感じを医師に相談してみてください。もとの仕事や親子の時間に気がねなく戻れるよう、足首のようすを確かめる一歩から始めていきましょう。
よくある質問
Q. 歩いていると足首がガクッとなるのですが、痛みがない場合でも整形外科を受診してよいですか?
A. 強い痛みがなくても、歩行時や段差で足首がガクッとなる場合は整形外科への受診をおすすめします。過去の捻挫による靱帯の緩みや、足首を支える筋力・バランス機能の低下が残っている可能性があり1、そのままにすると大きな転倒や軟骨の損傷につながることがあるためです。診察で関節の安定性を確認し、状態に合ったリハビリテーションや対策を相談できます。
Q. 市販のサポーターを着けていれば、仕事やサッカーの練習を続けても大丈夫ですか?
A. サポーターは関節の動きを補助する役割を持ちますが、着けていれば運動や重労働を続けてよいとは限りません。靱帯の損傷具合や関節のぐらつきの程度によっては、サポーターだけでは負荷を支えきれず再受傷することがあります。まずは医師の診察で現在の運動制限の必要性を確認し、作業や競技の内容に適した装具の選び方や使用期間についてアドバイスを受けることが大切です。
Q. 小学生や中学生の子どもが足をひねった場合も、大人と同じように考えてよいですか?
A. 成長期の子どもが足首をひねった場合は、大人とは異なる注意が必要です。子どもの骨には弾力があり、関節の近くには力に弱い成長軟骨があるため、その部分でずれる骨折など子ども特有の骨折が起こることがあります5。腫れが軽いように見えても自己判断せず、早めに整形外科でレントゲン検査などによる確認を受けてください。
参考文献
1. Kobayashi T, Tanaka M, Shida M. Intrinsic Risk Factors of Lateral Ankle Sprain: A Systematic Review and Meta-analysis. Sports health. 2016. PMID: 26711693 / DOI: 10.1177/1941738115623775
2. 距骨骨軟骨傷害(きょこつこつなんこつしょうがい) | 聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院. https://seibu.marianna-u.ac.jp/medical/cases/11391/
3. Guo Y, Cheng T, Yang Z et al. A systematic review and meta-analysis of balance training in patients with chronic ankle instability. Systematic reviews. 2024. PMID: 38347564 / DOI: 10.1186/s13643-024-02455-x
4. Biz C, Nicoletti P, Tomasin M et al. Is Kinesio Taping Effective for Sport Performance and Ankle Function of Athletes with Chronic Ankle Instability (CAI)? A Systematic Review and Meta-Analysis. Medicina (Kaunas, Lithuania). 2022. PMID: 35630037 / DOI: 10.3390/medicina58050620
5. 「小児の骨折」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる. https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/infants_bone_fracture.html
とくなが病院 整形外科
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日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定リウマチ医
日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
日本体育協会公認スポーツドクター
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